裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

火曜日

観劇日記・40『ハローグッバイ&グッバイ』

『ハローグッバイ&グッバイ』
作・演出 芳賀優里亜
制作:株式会社ピース
出演/芳賀優里亜 齋藤涼祐 阿部能丸 田仲カヲリ 江田佳代 深井邦彦 小沢輝大 菊池優 遠藤澄人・他

於中野MOMO
2月21日観劇

江戸時代の伝統を頑固に守る風鈴職人である父を持つ娘・鈴は、住み込みの弟子である堅吉に、ひそかな想いを抱いていた。親友の千代子と蘭子にその想いを打ち明け、告白する決心をしたその日、堅吉は事故でこの世を去ってしまう。それから6年後、新しく弟子入りしてきた弟子、高男の顔を見て、鈴は驚く。なんと彼は、堅吉に瓜二つだったのだ・・・・・・。

『仮面ライダー555』で園田真理役をやっていた芳賀優里亜さん(芸名より役名の方が地味)が何と脚本・演出・主演の三役を勤めた舞台。別に彼女の知り合いではなくて、助演している阿部能丸くんのお誘いで観たのだが、いやあ、初脚本初演出とは思えない堂々たる小劇場の芝居、という感じ。こういう女優さんが初めて書いた芝居が下町人情ものというのは、ちょっと、いやかなり意外であった。

主題は鈴の心を縛っている過去の恋からの解放、なのだが、その他、古い伝統を守る職人たちの心意気、3ヶ月という期間で天国から帰ってきた堅吉の物語、女優を目指す千代子のがんばり、など、2時間、いろんな要素をぎっしり詰め込んで、個性あふれる出演者たちも大熱演で、正直、見終ったあと、少し疲れた。

登場人物たちの演技(特に千代子)をもう少し軽めにしてもいいのでは、とか、上演時間をあと15分縮めればスッキリするのにとか思わないではなかったが、初脚演ならこの力みも当然か、と思う。力みすぎも初々しさのうち、なのだ。それにしても、美貌と才能の二つを並び供えているとはうらやましい。

言わせてもらえば、死んだ主人公が、現世に残した恋人(もしくは家族)に気が残って期限つきで帰ってくる、という主旋律ストーリィはありがちもありがちというか、私も小劇場芝居で馬に喰わせるほど観ている類いのもの。さらにその上に新しくこのテーマでやるのなら、どこかに新機軸が欲しいところだが、残念ながらそれは無かった(殊に堅吉があの世に帰るくだりにはもう少し工夫が欲しかったところ)。ただし、今回はその仲立ちをする神様(遠藤澄人)のキャラがかなりぶっとんでいて、類型化を脱している。やはり演劇はキャスティングから、だよなあとつくづく思う。それにしても、後生畏るべし。これで経験値積んだら、多くの小劇団は青くなるかもしれない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa