22日
日曜日
観劇日記・35『ヒトカタチ』(劇団・あやかし髑髏)
『ヒトカタチ』
パフォーマンス劇団『あやかし髑髏』旗揚げ公演
作・演出 尾畑信輔
出演(Wキャスト)
弥音夏(あやかし髑髏/GS−PRO)
星野良明(あやかし髑髏)
藤井彩葉
北村悠馬(M・arts)
音月あずみ(JMPAsumi)
於 新中野Studio NOV
2012年7月20日 観劇
劇団あやかし髑髏旗揚げ公演『ヒトカタチ』を目劇者グループとして観劇。
つい十数日前に自分も旗揚げ公演をした身として、ひとごとではない親近感を持ちつつ、
ライブハウスでの演劇というやりにくい場所を、「観客との距離が近い」という強みに
変えて演じている若い役者たちのエネルギーを受け取る。
ダムに沈むはずが、政権が変わったために工事が中止になった過疎の村。その学校で、
オカ研(オカルト研究会)が、ある実験を行う。それは、その地方に伝わる禁断の
まじない「ヒトカタチ」の実践だった。ヒトカタチは、行った者の願いをかなえて
くれる代わり、10年後、その人物の命から二番目に大切なものを奪っていくと
いう……。
主役の弥音夏(あまね・なつ)が特徴的なルックスで印象に残る他、メンバーの多くが
中学生役を演じて対して違和感ない年代の人ばかり、ホラーというジャンルは青春もの
でもあるということを再認識。若い世代というのは、肉体的にも社会的にも、自らの
うちに得体の知れない恐怖感が常に蟠っているのだろう。われわれオジサンにとって
恐怖は現実逃避だが、若者には心霊の恐怖というのはずっと身近・身内にある、
アイデンティティの問題なのだ。
「10年後に命から二番目に大事なものを持って行かれる」
まじないなど、われわれの世代の常識ではどう考えてもハイリスクすぎるが、
10代の子たちにとり、10年後などというのははるか遠くの、何が起こっても“現在の
自分”とはてんで関係ない時間的距離なのだ(われわれも1973年に『ノストラダムス
の大予言』を読んで、26年後の1999年の世界滅亡を全くの遠い先の話として
エンタテインメント的にとらえていたものなあ)。
そう思うと急に怖くなってきた。ホラー要素そのものよりも、若い世代という
ものが、自分たちとは全く違う思考回路を持った異形の存在として見えてきたから
である。作・演出はその周辺の、若さ故の恐怖の実体をよく、舞台上に移して
いる。
ブリッジに音楽を用いてないので暗転の舞台転換の足音などが聞こえてしまう点、
ライブハウス故に反射光源がいろいろあって、出ハケが見えてしまう点など、
初日ゆえの不手際も目立ったが、なにしろ不手際の10の10まで
数日前までやっていた自分のことを思うと何も言えない(笑)。
Wキャストは、役者たちがスタッフ兼任で動くための工夫でもあったのだな、と
思い、いずこも苦心しているな、と同情したり。また、席数34のライブハウスに
50人以上のお客が入ってしまったため、演出の尾畑氏が濡れた布を後ろから客の
首筋に当てる、などのギミックが使えなかったというアクシデントも
後で聞いて、そういうこともあるある、と公演あるあるネタでうなづいてしまったり。
打ちあげで聞いたら、ここのライブハウスはしばらくここの劇団の専用劇場として
使っていくそうだ。根城がある劇団というのは強い。今後とも頑張って、
通常の小劇場演劇とは異った、新しい息吹を伝えていってもらいたい。