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2013年1月30日投稿
つぶやき日記1月5日〜8日
1月
5日(土) 崖の上のバイオリン弾き
「ポニョがユダヤ人でも好きか」
朝10時起床、朝食於母の室。自室に戻りまた寝る。まだ松の内、土曜だし、とグータラを決め込む。起きるとネット散策したり、本読んだり。発作的にこんなことではいかん、と物置部屋のダンボール整理をはじめたりする。ビデオがぞろぞろ。で、それを見始めたり。まあこういうところがいかにも正月休み。
書き下ろし、企画書もやらねばならないが、しかしまた日記もまとめないと、と、思考もとりとめなし。
昼はアボカドとエビが冷蔵庫にあったので、冷凍室の中のラムひき肉を解凍して、バリ風混ぜご飯。バジルがなかったのでパセリで代用。食べながら、VHSで佐藤肇『海底大戦争』(1966)見る。ヒロインのペギー・ニールはこの作品を皮切りに『宇宙大怪獣ギララ』(1967)、『クレージー黄金作戦』(同)と、東映・松竹・東宝と三股をかけた作品歴を残す特異な女優。恋人(千葉真一)のことをずっと「アベ」と 苗字で呼んでるのがどうも違和感。時代なんだろうか。
食後、物置部屋整理していたらくたびれて、また寝る。ずいぶん睡眠は取っているはずなのにまた熟睡してしまう。目が覚めて、寝室が真っ暗なので、わ、深夜か、と思ったらまだ夕方の5時だった。
DVDで『人間は何を食べてきたか』「乳製品」を見る。この番組は教育テレビスペシャルで1985年にシリーズで放送されたもので、そのシリーズの大ファンだった宮崎駿、高畑勲によって企画が出されたとみえ、NHKビデオでありながら『ジブリ学術シリーズ』というくくりで、毎DVDごとに当時のプロデューサーやディレクターと宮崎、高畑両氏との座談会が収録されている。そう言えば宮崎氏の『シュナの旅』(1983)も穀物伝来譚だった。当時の宮崎氏は食文化に興味を持っていたのだろう。
この「乳製品」に出てくるベドウィンの少女、ラドアは、羊の群れと共に暮している。全ての羊の顔を覚えているといい、少女ながらも一家の支えになっている。黒のベドウィン衣装姿も凛々しく、いかにも宮崎・高畑好みの美少女だなあ、と思いつつ見る。
食べたもの。朝:塩ジャケ、漬物、果物(メロン)。昼:バリ風混ぜご飯。ミカン。夜:くーぷいりちー、千枚漬、チキンレバーソテー。『人間は何を食べてきたか』見ていたらチーズが急に食べたくなり、急いで近くの店で買ってきてフランスパンと。発泡酒、エール、黒ホッピー。
6日(日) 酒の上のポニョ
いや、酔っぱらって洪水を起こしてしまってどうも面目ない。
朝、見た夢が椅子に座って本を読んでいたらズボンのチャックが全開だと指摘されるというもの。こんなのが初夢でなくてよかった!
仕事関係メールいただく。ああ、もうそろそろ日常に復帰せんとな、と思いつつ、初打ち合わせが8日なので、それまではフリーの特権でだらだらしようと。
処分本の荷造りをしながらビデオで『WORLD'S BEST KNOWN DICKS』(世界の名探偵)を見る。1940年代のアメリカのミステリ映画アンソロジーだが、パソコンのある部屋でこういうもの見ちゃいけない。ついつ い、USAmazonでDVDボックスをオトナ買いしてしまったではないか!
ちなみに『WORLD'S BEST KNOWN DICKS』にはディック・トレーシーものの一本『Dick Tracy Meets Gruesome』(1947)がちょっと長めに紹介されている。これは私が初めてアメリカに行ったとき買ったビデオのうちの一本で、懐かしく見る。フランケンシュタインで有名なボリス・カーロフが怪人グルーサム(不気味)に扮し、トレーシーに復讐しようとする話。
で、そこでグルーサムが使う武器が神経ガス弾。人間の神経をマヒさせて、動きを止めてしまう。これを吸った者が全てフィルムのストップモーションと、パントマイムでぴたっと止まってしまう。ここらへんがいかにもマンガの映画化で面白い。ウォーレン・ベイティのトレーシーもこれくらいやって欲しかったな。
ラストはグルーサムを倒したトレーシーの事務所にやってきた警部が、間違って残ったガスの容器を割ってしまう。トレーシーが恋人とキスしようとしたところでピタッと止まってEND。実にシャレているじゃありませんか。B級映画ではあるが、ここらへんのセンスがたまらない。ちなみに、トレーシーの恋人テスを演じているアン・グウィンは1944年にすでに『フランケンシュタインの館』のヒロインで、カーロフと共演済み。ただしこの映画ではカーロフはフランケンシュタインのモンスターは演じず(演じたのはグレン・ストレンジ)、マッド・サイエンティストのドクター・ニーマン役であった。
メール、寒中お見舞いなど。荷造り続ける。ニュースザッピングして、新しい大河ドラマ『八重の桜』、見るとこなく見ていたら、引き込まれてしまった。まあ、ルーティン的展開ゆえに、ということもある。
「NHKのドラマで女性が主人公の場合、まず最初は大抵木に登る」
という基本(?)も押えているし。朝ドラの元祖『おはなはん』でも、最初に樫山文枝が木に登っていた。
幕末の著名人が一堂に会する山田風太郎作品みたいな脚本もおもしろい。こうして見ているとこの作品、徹底的に『清盛』の失敗の要因を計算して作っていることがわかる。一ヌケ二スジ三動作、の一ヌケの部分に特に。室内の暗いシーンでもちゃんと“謎のライト”当ててるし。
しかし、番組で描かれる日新館の教えは徹底した儒教教育。男尊女卑であるし、 「ならぬことはならぬものです」 というのもかなり日本式儒教の封建的な自由思想弾圧的言辞である。反日大河と言われた『清盛』の、これも反動だろうか。流れで観ているリベラルさんたち、大丈夫なのか。
まったく、体と頭が完全に休日モードになっており、その後もテレビ見続ける。NHKスペシャル『父と子 市川猿翁・市川中車』。45歳という中年で歌舞伎の名跡市川中車を継いだ香川照之のドキュメントだが、私の見るところ、『楼門五三桐』の五右衛門、海老蔵より中車の方が格段に上手い(現在の演技常識において)。踊りとか、さらには顔のよさというようなものは別として、演技という面では、いわゆる旅修業をあらゆる現場でしてきた香川の方がずっと引き出しが多いのは当然と言える。談之助の『立川流騒動記』の中で、実は最も革新的な論である
「古典芸能に修業は不要」
という理論がここでも証明された気が。
実は教育法さえ合理的であれば、芸能に限らずどんなものであっても修業など不要なんだということを『北斗の人』とか『おお、大砲』などで主張したのが司馬遼太郎。
食べたもの。早朝:ミカン、スイートポテト、ヨーグルト。朝:牛肉炒め、味噌汁、果物(リンゴ、柿)。昼:バリ風混ぜご飯(今日はちゃんとスイートバジルを使った)。夜:せんべい汁。スーパーで 売っていたせんべいとスープのセットだが、鶏肉のつみれと豚バラ肉、油揚げ等を加えて旨し。他に枝つきトマト、エリンギのバタ炒め。エール、発泡酒、黒ホッピー。
7日(火) ワン、ツー、スリー、フォー、愛撫、セックス
見つめ合い、抱き合い、キスして、脱がして。
明日は仕事はじめ。うまくいけば今年のメインになるかも、というものなのであるが、古い友人の仲介なので、緊張感あまりなし。ま、気楽に行こう。待ち合わせ場所や時間など、Gくんからのメールに返信。
緊張と言えば、今月中に大塚周夫さんと飲むことになっている。こっちの方に緊張。こないだ劇場で飲み会の約束して、
「僕は飲むと医者に怒られるからあまりお付き合いできないから」
とのことだったが、今日連絡あって
「唐沢さんの家に近い中野にしましょう」
と。いや新宿でいいですよと間に立ったTさんが言うと、
「新宿だとさ、次から次と(ハシゴで)いっちゃうから」
と。やはり役者は元気。元気すぎ。
大塚さんの方は話が進むが、明日あたりにと計画していた平山亨先生のお見舞いがノロ流行のせいで延期になってしまった。周囲の人間関係にも神経を使わないと。
TBS『ひるおび』の打ち合わせについてもオノから連絡。やはり新年一週間たつと仕事の件いろいろ。そのとどめで、夕方、某週刊誌から電話、来週からのインタビュー連載が決まる。ただし匿名で。言いたい放題が言えそうで、これは面白い仕事になりそうだ。
食べたもの。朝:豚肉照り焼き。昼:かすうどん。揚げをトッピング。夜:せんべい汁残り。イカのマヨポン。千枚漬。エール、黒ホッピー、緑茶ハイ。
8日(水) 手塚大寒、手塚小寒。
治虫と真。
正月にUSAmazonで注文した商品につき、“Your order is being shipped”と通知が来る。“shipped(出荷)”は別に船に限らないのだが、何か大きな帆船に積み込まれて波頭を蹴立てて渡ってくる、というイメージがあって、ワクワク感がたかまる。
円安株高続く。渡辺恒三がこれは前の内閣がひどすぎた影響だと言っているとニュースにあった。お前がいた政党の内閣じゃないか、少しは責任を感じろと言いたいところ。あれだな、これは『清盛』が酷すぎたんで『八重の桜』の評価が高くなっているようなものだな。
昼にヨーグルトチャーハン(溶き卵にヨーグルトを混ぜる)を作ったのだが、考えてみれば今日は打ち合わせのあと、接待があるのだった。半分は明日に回そう。と、思いつつネットみながら食ってたらほとんど腹に入ってしまった。
佐藤允氏、昨年12月6日に死去の報。78歳。商店街の階段を踏み外して頭部を強打、外傷性クモ膜下出血で意識混濁のまま、肺炎を併発して、だそうだ。ついこのあいだ、兜木励吾氏が亡くなったのも、駅の階段からの転倒だった。中島らも、小泉喜美子、塩沢兼人、いずれも階段から落ちての死。私は昔から、それで石造りの階段には恐怖症的なところがある。
役者としての佐藤允と言えばやはり『独立愚連隊』シリーズ(1959〜)があるが、私が好きなのは東映の『直撃地獄拳・大逆転』(1974)の刑事・隼猛である。これこそ実写・ルパン三世だ、といえる痛快ナンセンス映画の傑作であるこの作品、主役の怪盗トリオが東映の千葉真一、日活の郷英治(英は王ヘンがつく)、そして東宝の佐藤の大手三社出身の俳優の組み合せで、ビルに上空から忍び込もうとセスナを調達するが、操縦士がいない。千葉と郷が、操縦士はどこだ? と言ってると、ゼロ戦の飛行士の格好に身を固めた佐藤が、
「♪エンジンの〜音〜轟々と〜」
と歌いながらやってくるシーンと、その後の三人のやりとりは大爆笑ものだった。
最も印象的だった役と言えば杉江俊男監督の『三十六人の乗客』(1957)。なにしろ、あれだけ個性的な佐藤允が、どこにいるかわからない。学生時代、文芸坐のオールナイトで最初に観たとき、
「キャストに佐藤允とあったが、きっと途中降板して、ロールを書き替えるのが間に合わなかったんだろう」
と思ったくらい。それが後半、やっぱり佐藤允は佐藤允だったときの納得感といったら。本当に、存在感そのもののような人だった。黙祷。
マイミクさんのつぶやきで、今日(8日)になって「兜木励悟が死んだのか」といっている人がいて遅い遅いと笑っていたら「首相が替わったのか」と言う人がいて仰天した。どちらも情弱な方ではない、たまたまその情報が入ってこない環境にいただけ。
打ち合わせは6時からだが、5時にGくんと前もっての打ち合わせをしよう、と4時ちょい過ぎに家を出て、東京駅に向う。夕暮れのビル街、中央線の窓外に映り、思わず喉元にこみあげるものあり。忘れてた、この時期のこの時間の都心の風景にヨワいんだった。ビルの窓から漏れる灯りにウルウル。
ちょっと改札で前の人のトラブルあり、遅れてしまうが、時間余裕もっていたんで問題なく丸の内ホテルへ。概要をGくんにレクチャー受けて、ロビーでクライアントのM氏、O氏と。そのまま同階の和食懐石割烹『椿寿』で食事。日本酒が出たが、これが能登の酒『遊穂(ゆうほ)』。ちょうど、UFOが話題になっていたので、これはぴったりの酒ですね、などと笑っていたが、後で聞いてみると、UFOの街、羽咋のお酒で、実際にUFOにちなんで付けられた名前だとか。
M氏、出版畑に来る前は麻酔医だったという異色の経歴。多趣味多才、よく飲み、よくしゃべりよく笑う。大変に闊達な人物。話はずむ。逆にGくんとはアニドウ時代からのつきあいで、ずっと、会うとベティ・ブープの話やホルスの話、ゴジラやウルトラマンの話ばかりしていた記憶があるが、ちゃんとクライアント相手にビジネス話をしている。人間は大人になるものだ、と感心する。こっちが趣味を半ば仕事にしてしまい、大人になりきれていないだけなのだが。
食事終ったあと、愛煙家であるMさんに誘われ、同ホテル内にあるシガーバー『コネスール』へ。せっかくシガーバーに入ったんだから、と、短時間で吸えるコイーバシグロIをチョイス。豊かな味を楽しむ。Mさん大変にごきげんで、
「こんなに楽しい晩は初めてだ」
とおっしゃってくださる。仕事の件は、とりあえずGくんの方で、今日の話をまとめて企画書にして出すということで。9時過ぎ、タクシーで帰るが、残った三人はさらにもう一軒、いった模様。
食べたもの。朝:ハンバーグ、味噌汁、果物(リンゴ、ミカン)。昼:ヨーグルト炒飯。夜:丸の内ホテル和食『椿寿』懐石。治部煮が旨かった。ビール、日本酒。バーでアイリッシュウイスキー。