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2011年10月9日投稿

タフだった男 【訃報 チャールズ・ネイピア】

『ランボー/怒りの脱出』(1985)で、ランボーに対し徹底的に高圧的
態度に出るマードック司令を演じていた俳優。頑丈な体格、真四角ないかつい顔。
およそ、保安官とか警官とか軍人とかを演じさせてこれほど似合う俳優は
いなかった(軍人が似合うのは当然で、陸軍空挺隊の出身者であった)。
もちろん、その対角線上にあるギャングや悪徳政治家なども似合っていた。

B級怪獣映画『ディノクロコ』やB級SF映画『エイリアン・クライシス』
や、B級モンスター映画『スティンガー』など、レンタルビデオ店の棚で
おなじみのB級作品のキングと言っていいかもしれない。出自がなにしろ
B級セックス映画の帝王、ラス・メイヤー映画である。

その一方で大作にもコンスタントに顔を出し、上記『怒りの脱出』の他、
トム・ハンクスがエイズ罹患者の弁護士を演じてアカデミー賞を獲得した
『フィラディルフィア』(1993)では裁判長、オバカ映画『オースティン・
パワーズ』(1997)では将軍など、アメリカ映画においてはどこにあっても、
ネイピアのような俳優は必要とされていた。そういう大作映画において最も
有名な役柄は、『フィラディルフィア』のジョナサン・デミ監督の出世作、
『羊たちの沈黙』(1991)でレクター博士の手にかかり、檻(レクター
博士を閉じこめておくための)に蝶の標本のように磔にされる警官役だろう。
ハリウッド映画で最も有名な惨殺シーンの被害者を演じた役者、でもある。

『ブルース・ブラザース』(1980)ではやたら暴力的なカントリー歌手。
自分たちの名を騙ったジョン・ベルーシたちに銃をぶっ放すのはやはりチャールズ・
ネイピアらしいと言えば言えるが、それでも歌手役とは、と意外に思って
いたら、なんと60年代には『宇宙大作戦(スター・トレック)の
『自由の惑星エデンを求めて』で宇宙ヒッピーに扮し、エレキギター(?)を
弾いて歌っていた。
http://www.youtube.com/watch?v=MRewcZXEMb8&feature=player_embedded

10月4日、たぶん脳溢血であろう、急に昏倒してその翌5日に死亡。
長いことの寝たきり、などということもなく、いかにも未練なくこの世を
立ち去ったのも、タフガイを売り物にした彼らしいと言えば言えなくもない。
ある意味、非・スターである役者の、映画界における出世街道の理想像と
言えたかも知れない一生は、充実したものだったと思う。75歳。もうちょっと
スクリーンにそのいかつい顔を見せ続けてほしかったが。
R.I.P.

Copyright 2006 Shunichi Karasawa