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2011年4月11日投稿

石原慎太郎も時には正しいことを言う

しかし、つまらぬ選挙でしたね。
いつも選挙速報番組のときは、テレビの前に酒を用意し、
開票状況をサカナにゆっくりと……というのが習慣なのですが、
今回は開票が始まったとたん、アナウンサーの第一声が
「石原慎太郎氏に当確が出ました」
でした。

……まあ、最初から結果はわかりきっていたというか。

このような大災害時に、現職を再任するというのは
緊急時の選択としてまず妥当なところでしょう。
各省庁、政府関係、自治体など全てに、いちいち新人知事が
挨拶回りなどして打ち合わせる余裕などない。指示系統に
不慣れなリーダーでは、現場の指揮に混乱が生じる。
それはこのような状況下では、多くの人の生命にかかわる
問題です。

ハッタリではあっても、石原氏のような、総理大臣を
“君”づけで呼び捨てられるような、言わば“通りがいい”
顔の人物が求められるのは理の当然。
他の候補がいくら頑張っても、これは比べられるだけ不利
というものです。今回の選挙結果は、石原氏の人格や政策では
なく、非常時においての実用性で選ばれたと見ていいでしょう。

もちろん、問題は石原氏がそれをカン違いするということ
なのですが、それはまた別のこと、です。
それは。都条例問題が何より自分にとって大事なのだ、という
方々もいらっしゃるでしょうが、上記のような問題とそれとは
やはり同列には論じられないよなあ、というのが正直な
感想です。

それはそれとして、当確が出た直後の石原氏の選挙事務所
での会見を聞いて、ホウ、と思ったことがありました。
マイクを握った石原氏が、真っ先にこんなことを言ったのですね。

「まだ開票が始まってないでしょう。こういうメディアというか
報道の滑り方というのはよくないと思う。開票が始まる前に
出口調査か何かしらんけど、今日、歩を運んで投票してくださる
方のためにね、開票というものが開始される前にね、当落を
ウンヌンするっていうのはね、私は民主主義的な選挙のあり方
にとって、好ましいとは思えませんな」
http://www.youtube.com/watch?v=0i0pYXSus5M

いや、暴言装置みたいな人間でも、時には正しいことも言う、
と私はちょっと感心してしまいました。
私も、これは全くの同感。

実際は出口調査に加えそれ以前の世論調査の結果などを加味して
予測するようですが、一票を権利として投じた人たちにとり、
その票がまだ開票されないうちに当確が出るというのは、納得
いかないものがあるんじゃないでしょうか。

一票の重み、なんてことを普段さんざ言っておきながら、
開票率0パーセントでもう当選が決まるということが繰り返され
ていたら、一般人の感覚としては
「ならNHKが調査さえすれば、投票なんか必要ないんじゃ
ないか」
という感じになってしまうでしょう。

昨今の投票率の低下傾向というのは、これがひとつの原因では
ないか、と前から思っていたのです。

投票、開票という話になると、映画『白い巨塔』の教授選の、
あの息詰まるような開票シーンをいつも思い出します。あれも
その“経過”が見える故の名シーンでした。自分の投じた一票が、
例えその候補が当選したにせよ落選したにせよ、政治に参画
したんだという充実した意識を持たせるためには、やはり当落の
結果というのが開票が進むにつれてあきらかになる、その方式に
しくはないのではないかと思うのです(そう言えば、大晦日の
紅白歌合戦も、日本野鳥の会が出なくなり、コンピューター集計
になったら、ワクワク感が薄れてしまいました)。

選挙はエンタテインメントではない、という意見もあるでしょう
が、エンタテインメント性を持つことは悪いことではないで
しょう。ましてや、それで一般大衆の選挙への興味をつなぎ
止められれば。

選挙への関心、投票への関心、これを保たせるためにも、
もう少し、結果発表というのは“じらした”方がいいのでは
ないかと思うのであります。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa