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2011年1月10日投稿
トートータラリアニズム(?) 【訃報 ヘダ・コヴァーリ】
チェコの作家ヘダ・コヴァーリ12月5日、死去。
91歳。
かつてユダヤ人としてナチの迫害にあい、その後母国チェコで
有名な粛清裁判であるスランスキー裁判により夫を処刑された。
このスランスキー裁判を題材にした映画がコスタ・ガブラスの
『告白』(70)で、少年時代からこのポスターがやたら
怖かったものである。この目隠しメガネ、いったい本来は
何に使うものなのか? やたらメカニックなその作りがそのまま、
共産主義の機能主義的非人道体勢のアナロジーになっていた。
コヴァーリは当時のことを記した『残酷な星の下に』を
驚くべき冷静な筆で書き共産主義の持つ本質的な非人道性を告発
するが、少なくとも社会主義体制国家の崩壊を自らの目で見、
祖国チェコのプラハで91歳の天寿をまっとうできたのはまず、
重畳と思いたい。
……ところで、彼女の功績を記した海外のサイトを検索すると、
“Totalitarianism”という単語が必ず出てくる。“全体主義”という
意味である。現在はコミュニズムとかソーシャリズムとかという
のをまとめて、このトータリタリアニズムという用語を使うのが
一般的らしい。
まあ、それ自体は大変に結構なのであるが、私はどうもこの、
“トータリタリアニズム”という用語を口にすると、舌を噛み
そうになる。“トータリアニズム”ではダメなのか?
“タリタリ”というあたりが、どうもマットウな用語ぽくない。
私がこの用語の響きから連想するのは、謡曲の『翁』とか『寿三番叟』であって、
「とうとうたらり、たらりら……」