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2011年1月2日投稿
爆弾を仕掛けた女(ひと)【訃報 佐野洋子】
※注意 作品のラストについて言及があります。
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『100万回生きたねこ』の作者・佐野洋子氏死去。
11月5日、死因は乳癌。
2年前の冬に余命2年と宣告されたそうで、
そこから早くも遅くもなく、きっちり2年でこの世を去った
のがこの人らしいというか、何というか。
夫だった谷川俊太郎は、大恋愛により結ばれた彼女との結婚を
“お抱え評論家との生活”と表現したらしいが、確かに、
才能あふれる女性ではあったが、そのエッセイを読むに、
これだけ容赦ない批評眼と毒舌の才を持つ女性との結婚生活は
地獄(愛のある地獄だが)だったろう。
大いに谷川氏に共感し、同情する(笑)。
しかも『100万回生きたねこ』はたぶん、谷川氏の全ての詩作
を軽く飛び越えた名作である。言葉をきらびやかに飾る天才で
ある谷川俊太郎に比べ、佐野洋子は言葉から虚飾全てをべりべりと
はぎとる天才であった。
『100万回生きたねこ』の文章も実にそっけない。
しかし、そのそっけなさが実に、響く。
「そばに いても いいかい」
「ええ。」
これが100万回目の生にして初めてのプロポーズと、その答えだ。
そして主人公の猫は、その最愛の猫の死と共に、生まれ変わるのを
やめる。100万回生きるより、ただ1回の、愛するものとの死の
共有を選ぶ。こんな話がなぜ子供向けの絵本なんだろう。
このよさがわかるのは50を過ぎてからだと思う。
50年かけて、佐野洋子は爆発する感動の爆弾を子供たちの
心の中に仕掛けていた。
この究極の愛を描いた作者である佐野洋子氏は、結局2回の結婚に
失敗して、一人で孤独に亡くなった。それはそれで自分で認めて
いた死に様であったらしいが、次の生では、ぜひ、輪廻最終の
パートナーに恵まれることを祈る。
黙祷。