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2010年8月3日投稿
日本アニメを広めた男 【訃報 ピーター・フェルナンデス】
15日死去。83才。
『スピード・レーサー』こと『マッハGO!GO!GO!』の
主人公スピード、その兄の覆面レーサーXの声など複数を演じた声優。
アメリカ版主題歌の作詞をしたのも彼である。
http://www.youtube.com/watch?v=ALzDcMDhf2o
http://markethack.net/archives/51594426.html
↑この記事によるとこの番組のヒットでアメリカに日本製アニメの
存在が一般化したという。もっとも、この記事のライターは
知らないらしいが、彼が歴史的価値(だけのもの)と言っている
『アストロボーイ(鉄腕アトム)』も『ジャイガンター(鉄人28号)』
も、吹き替えとシナリオ作成はピーター・フェルナンデスがやって
いたのだ!
ラジオのパーソナリティから出発して、子供番組の人気声優として
長年にわたって活躍したフェルナンデスは、ことに日本のアニメを
アメリカに普及させるにあたり、声優、ディレクター、音響監督を
兼任して大きな功績があった。
日本版のシナリオの直訳から英語版の吹き替えシナリオをオコす仕事を
彼は膨大にこなした。まあ、一本当たりの翻案代がたった100ドルだった
というから、膨大にやらざるを得ない。彼はそれまでのスクリプトライター
が日本版のセリフを忠実に英語にしようとしていたのを廃し、絵に合わせて
セリフをいろいろと創作してつめこんだ。それがアメリカ人の感覚に
フィットした。
アニメばかりではない。
『ウルトラマン』『マグマ大使』『モスラ』『南海の大決闘』
といった特撮映画、特撮テレビのアメリカ版台本製作、演出、吹き替えも
一手に引き受けていた。昭和の特撮ブームはこれらの作品が外貨を
稼いでくれるため、という要因が大きかったが、それはフェルナンデス
のように、この分野で才能を発揮し、大量の仕事をした人物がいたからで
ある。われわれ、それで育った人間はみな、フェルナンデスに敬意を
表すべきなのである。アメリカのオタクのサイトには、フェルナンデスの
死をウルトラマンの『怪獣墓場』のシーンを引用して追悼している
ところもあった。
http://magiccarpetburn.blogspot.com/2010/07/peter-fernandez-ultraman.html
単に内容を英語に置き換えるのでなく、フェルナンデスは日本語、
中国語、イタリア語などという各言語の、単語の長さや息継ぎなどの
特性を分析し、それに合わせた英語のセリフを書く、という離れ業を
やり、吹き替えが不自然でないようにした。さらに独自の録音方法
まで工夫して編み出した彼は、アメリカにおける吹き替え業界の最重要
人物になった。韓国のヒーローもの『インフラマン』、クリント・
イーストウッドのマカロニ西部劇なども手がけたという。イーストウッド
と言えば山田康雄だが、フェルナンデスはアニメ『ルパン三世/ルパンVS.
クローン』ではルパンの声を吹き替えている。日本ではこの二人、同じ声
なのだということを彼は知っていただろうか。
アニメ界で“伝説の人”であった彼は実写版『スピード・レーサー』では
アナウンサー役でカメオ出演。
ここらへんをしっかり押さえてくれるのがアメリカのいいところ。
アイドル使ってリメイクすりゃいいと思っている日本、爪の垢でも
煎じて飲んでほしい。
http://video.google.com/videoplay?docid=8268413408084606802#
感謝を込めて、黙祷。