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2009年10月27日投稿

第二回ルナティック演劇祭結果発表&終了御礼

19日から25日にわたって下北沢・小劇場『楽園』で
行われました『第二回・ルナティック演劇祭』
大盛況のうちに無事、終了いたしました。

第一回から半年しか経っていない時点での第二回開催を
あやぶむ声もありましたが、蓋を開けてみれば、第一回を
大きく上回る観客動員数を記録し、文字通りの大盛況でした。
主催者のひとりとして、劇団あぁルナティックシアター、
本多劇場グループに代わりまして御礼申し上げます

個人的感想を先に言わせてもらえば、バラエティに富んだ
劇団がバランスよく出場した第一回に比べ、第二回はいかにも
“今”を象徴するタイプの芝居が重なり、同種対決に
なった部分があったかな、と思います。それだけに、
勝ち抜く、という感覚がかなり強くなったかもしれません。

ビデオ等による選抜の結果、選ばれたチームは
『幸せの刻−シアワセノトキ』(集団as if〜)
『乙女の祈り』(江古田のガールズ)
『罰と罪』(HAGELpro)
『はちみつ』(湘南アクターズ)
の四つでした。

結果は、
優勝:集団as if〜『幸せの刻−シアワセノトキ』
最優秀演出賞:山崎洋平(江古田のガールズ)
最優秀脚本賞:藤丸亮(集団as if〜)
最優秀演技賞:該当者なし
唐沢俊一賞:『はちみつ』(ラスト部分に対して)

ということになりました。

演技賞が該当者なしということになったので、賞金を4分して
各劇団で印象に残った役の人に差し上げることとなり、
集団as if〜「“これ、テイクオフして!”というセリフの人」
江古田のガールズ「韓国人の女の子」
HAGELpro「独房の殺人犯」
湘南アクターズ「ピンクのメガネの子」

と、それぞれ発表。個人名でないのはあくまでも“役”に
差し上げるということで。

以下、日記にも書きましたが総評で。

『集団asif〜』の『幸せの刻−シアワセノトキ』
「ちょっと笑えてちょっと泣けるファンタジックな舞台は他の
劇団さんに任せまして」
というチャレンジャブルな文句がパンフにありました。
ネガティブ・コメディという、まあ言ってみれば後味の悪い
芝居を敢てコンクールに出したその意気やよし。
課題である時計(時間)の使い方、そして練られた脚本と
インプロ(即興)部分の組み合わせ。
初日の一発目の公演(順番決めは顔合わせ時のジャンケンで
決定)というのも印象的に味方したかもしれません。他と比べての
評価でない、オリジナルのインパクトがとにかく強烈でした。
話の展開に粗っぽい部分がかなりあった、という意見も審査段階
で出ましたが、しかしそれを補ってあまりあるパワーを感じる
舞台だったということで、総合得点第一位、見事優勝を獲得。
この劇団はHPを見てみると、7月にも他の演劇コンクールで
優勝と脚本賞を取っていますね。演劇祭荒しとなるか?
今後が楽しみな劇団です。

『江古田のガールズ』の『乙女の祈り』
ここは伏兵という感じで、『asif〜』の独走を許しませんでした。
審査経過は非公開が原則ですがちょいとあかすと、劇団員票は
ダントツでここが取っていました。私も、この芝居に最も好印象を
抱きました。興味深いことに、まったくの偶然ですが、芝居の作り
が『幸せの刻』と正反対。ラスト30分はまさに対照的でした。
『幸せの刻』が1時間さんざ笑わせてラストで心の闇を見せる
ネガティブ・コメディなら、『乙女の祈り』は最初の1時間を
鬱々と進行させ、そのポテンシャルをラスト30分で爆発させる
ポジティブ・トラジディ。そのツナギ部分で観客参加要素がある
ところまで相似形でした。脚本完成がちょっと遅れたようで、
その分、演技の“練り”が足りない部分があって、そこで優勝
劇団に一歩及ばなかった感じがしましたが、7月に『楽園』で
公演を打っている強みもあり、劇場の使い方は他を圧倒して
いましたし、大胆に芝居のワクをこわしていく演出は若さが
もたらす(何しろ主催者が日大演劇科在学中です)特権でしょう。
ここも数年後が楽しみです。

『湘南アクターズ』の『はちみつ』
声優・タレントの郷田ほづみさんが主催者の劇団です。
さすがプロの率いる劇団で安定しているという印象があり、
安心して見ることができました。
それだけに、クラシカルというイメージが付随したことが
ちょっとコンクール参加作品としては不利だったかも知れません。
観ている最中の印象がずっとそれでした。
……ところが、ラスト10分でそれを完全にひっくり返したの
にはのけぞりました。このはっちゃけパワーには脱帽。
大ざっぱに見えて実はかなり細かい演出の工夫があって、
楽しんで芝居を作っているという感じがしました。
主催劇団であるルナティックシアターに、最も近い色を持った
劇団さんだな、という印象でした。今回の演劇祭のアクセント
になってくれた劇団だと思います。

『HAGELpro』の『罰と罪』
ここは前回優勝した『MILSE』と最優秀演出賞をとった
『H・I・A』と特別賞をとった『母性本能プロラクチン』
という三チームの混成劇団で、そう聞くと凄そうですが、
個性的な劇団同士ゆえに、チームワークがうまくとれるかな、
と心配していました。そこをバラけさせず、ひとつのユニットと
してまとめた石動三六さんと秋葉由美子さんの演出力にまず、
感服です。当然大所帯となる故の人数整理も、要ゆうじさんの
脚本が、二人芝居を複数組み合わせて場を作っていくという
もので、これははこういう小さな舞台では基本となる作劇。
やはり考えているな、と思いました。
とはいえ、やはり、最初予定されていた演出家の降板などの
トラブルが最後まで後をひき、後任の演出者は“まとめる”
ことでエネルギーを使い果たしてしまった、という印象でした。
このままのユニットでいくか、それぞれ別のユニットを
作るか、いずれにせよ再チャレンジを期待したいところです。

以上、審査員としての講評でしたが、一観客としての目で
言うなら、こんな短期間にこんな質の高い、面白い芝居を
連続で見られる機会なんて滅多にない、と大興奮でした。
映画と違い、演劇は一期一会。たとえ再演があろうと、
今回のこの舞台は、観に来たときだけしか味わえません。
それは、演じる側、演出する側にも言えると思います。

好評をもちまして、この演劇祭、来年6月にまた『楽園』
において行えるはこびとなりました
。次回はどんな劇団が
どんな芝居を引っさげて参加してきてくれるか。今から
期待が高まっています。

年明け早々にも応募要項を発表いたしますので、皆様、
力作のアイデアを練って、お待ちください!

Copyright 2006 Shunichi Karasawa