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2009年4月27日投稿

ルナティック演劇祭、無事終了!

第一回ルナティック演劇祭、大盛り上がりのうちに26日、閉幕
いたしました。ありがとうございました!
すでに各劇団のサイト等でご存知の方も多いと思いますが、
以下のような結果となりました。

参加劇団
MILES 『SMILES』
http://miles.miceru.com/
母性本能プロラクチン『幽体離脱、加奈子サン』
http://818stage.jp/diary/1/index.php
H・I・A『権狐芝居』
http://video.aol.de/video-detail/-with-hq/3086418284
SpaceNoid『夜のサカナたち』
http://s-noid.com/

結果
優勝     MILES
最優秀演出賞 石動三六(H・I・A)
最優秀脚本賞 清水洋介(SpaceNoid)
最優秀俳優賞 藤木吾呂(MILES)
唐沢俊一賞  中澤隆範(母性本能プロラクチン)
特別賞    豊嶋任世(H・I・A)

審査委員  橋沢新一(劇団『あぁルナティックシアター』座長)
      本多慎一郎(本多劇場『楽園』支配人)
      唐沢俊一(『ルナティック・サーキット』プロデューサー)

審査方法  審査委員各30点、ルナティックシアタースタッフ各10点、
      入場者1人につき1点の持ち点で集計、総合得点の最も多
      い劇団を優勝とする。

総括:
下馬評でダントツのトップだったMILESに、SpaceNoidが凄まじい
肉薄。結局MILESが僅差も僅差で逃げ切った印象でした。
照明・音響等の効果使いまくり、東京を壊滅させようとたくらむ
天才ハッカーと探偵事務所の追跡劇でジェットコースターのような
演劇空間を現出させた『SMILES』と、音楽も効果も最小限、
渋く渋く千葉のホストクラブのホストたちの哀しくもしぶとい生き様を
見せた『夜のサカナたち』。
真逆の芝居でありながら作劇力、演技力、そして集客力いずれも
甲乙つけがたく、選考にはかなりの苦労がありました。

結局、コンテスト参加作品ということで、今回こちらから提出させて
いただいた課題の“舞台上に花を活けた花瓶がある”という設定を
どれだけドラマの中に活かしているか、その工夫にポイントを
入れた形で、MILESの優勝になりました。
おめでとうございます。

MILESの凄さはその徹底した情報収集とアイデア出しにあると
思います。もう2年以上もこの劇場を使っている私たちにも、
「ああ、こういう使い方があったのか!」
と膝を叩かせる工夫が随所にありました。スポンサーである
高須クリニックのCMまでを芝居の中に取り込んでしまうその
融通無碍さは小劇場演劇ならではのはじけた楽しさに満ちていました。
アイデア満載の分、ラストへの話の収斂にちょっとゆるみが見えたのが
残念でしたが、しかしそれを観客に感じさせなかったのは、
役者たちのテンションの高さ。中でもハッカー・FOXを演じた
リーダーの藤木吾呂さんの演技の持つ“狂気”は、断然、他を
圧倒していました。彼の最優秀俳優賞受賞は文句のないところでしょう。

SpaceNoidは真に申し訳ないのですが、最初はノーマークでした。
地方のホストクラブのホストたちの話ということで、
「劇団名にしちゃ地味なテーマの話を持ってくるな」
くらいにしか思っていませんでした。ストーリィも取り立てて
演劇的なところがなく、リアルなホストの生態を3割くらいの
キャラクターのカリカチュアを加えただけで淡々と進行していきます。
派手な演出もほとんどありません。
ところが、芝居が1/3くらい進んだあたりで、観ている方は
完全にその話の中に引き込まれてしまうのですね。
正直、こういう作劇術があったのか、と目からウロコでした。
脚本の清水洋介さんへの脚本賞も、これまた順当だと思います。

事実上、上記2劇団の争いとなった今回の演劇祭ですが、しかし
他の劇団も本当によかった。母性本能プロラクチンは、こういう場所
での演劇の基本線というべき安定した芝居を見せてくれました。
母親の死という暗くなりがちな芝居を明るく軽く見せてくれた手腕は、
リーダーの鈴木ちえさんのキャラクターのたまものでしょう。
今回の演劇祭のベースを作ってくれたと感謝しています。
そして、“異物”としてその中に出現し、マンガチックに、
しかし超印象的にトリックスターのマッド・ドクターを演じた
客演(劇団ヨロタミ)の中澤隆範さんの破壊力に、唐沢俊一賞を
差し上げることにしました。

そして何より『H・I・A』! 60歳以上の役者さんたちによる
演劇活動、というコンセプトが圧倒的な劇団でしたが、やはり
実際に芝居を作っていく過程でアクシデント連発だったようで。
取りまとめていた川瀬有希子さんのブログでそのことをリアルタイム
で読んでいたので、いざ、芝居が始まってみると、まるでドキュメント
を観ているような感覚に襲われました。こんな芝居もまず、他に
ないでしょう。しかしピンチヒッターの大ベテラン、野上正義さんと
劇団のカナメである元・校長先生の豊嶋任世さんの、実にもう、
ホンモノにしか出せない存在感! 芝居を観たMILESの藤木さんが
「こんなんに勝てるか〜!」
と愕然としていたくらいでした。とはいえ、登場する人の8割が
初舞台というこの芝居を、よくまあここまでまとめあげたもの、と
感心するしかありません。演出をし、かつ自らも演出家の役で
舞台に立った(これもドキュメントだなあ)石動三六さんの人徳と
演出力のたまものだと思います。彼に最優秀演出賞、そして
急遽、豊嶋さんに審査員特別賞を差し上げることに決定しました。

おっかなびっくりで始めた第一回ルナティック演劇祭、打ち上げも
盛り上がり、参加劇団同志の横の交流も活発だったようで、これで
下北沢の小劇場演劇をさらに少しでも活性化できたら、こんなうれしい
ことはありません。
参加劇団の皆様、劇場に足を運んでいただいた観客の皆様、本当に
ありがとうございました。今回の成功は皆様のおかげです。

第二回は今年の10月に開催されます。応募要項、課題等、
決まりましたらまたお知らせいたします。
奮ってご参加ください!

Copyright 2006 Shunichi Karasawa